Vol.10 “まちづくり”を考える 永橋爲介 准教授 生活している人の視点から見えること 持続可能、多文化共生、協働、市民参加、パートナーシップなど、近年、まちづくりに関しては、さまざまなキーワードがあります。豊かなまちづくりを現実にするためには、どのような視点が必要なのでしょうか?生活している人たちの視点から“まち”を見つめる永橋爲介准教授が語ります。

さんしゃが考える“まちづくり”

現在、私のゼミでは『環境まちづくり』をテーマに活動しています。

まちづくりというと、都市施設や都市インフラの整備、ニュータウンの建設や道路の整備など、工学部出身の専門家集団の専売特許なのでは?と思う人もいるかもしれません。たしかにそうした側面もあり、必要な技術もあるのですが、しかし、まちに人々が気持ちよく生活できるかどうかは、技術的な側面だけに規定されるわけではありません。

実は、まちづくりは、そこでいかに生活していくのか、まちをどう使いこなすのか、どう楽しむのか、同じまちに生活する他者と、どう関係を取り結んでいくのか、という視点や発想が大切なのです。

住んでいる人たちの思いを大切に受け止め、住んでいる人たちが自分たちのまちの魅力を再発見し、さらに好きになっていくためには何が必要か、という視点でまちづくりを考える。さんしゃで“まちづくり”を考える意味はそこにあると思います。

学生がまちに出ると、まちも学生も元気になる

さんしゃでは、フィールドワークを重視しており、学生はまちに出てさまざまな人に出会い、話を聴き、情報を集め、分析したり、企画を考えたり、それをまちの人々と一緒になって実現していくために、心と身体を動かします。

例えば、商店街の空き店舗を溜まり場にし、学生が子どもを預かってお母さんがゆっくり買い物できるようにしたり、おばあちゃんが来たら御用聞きをしてお使いをしてみたり…、さまざまなかたちでかかわります。学生はまちを“学校”にすることで、社会のリアリティを肌で感じ、社会問題を追求するスタート地点に立つことができるのです。

昨今の学生の中には自分で決断を下すことを苦手とする傾向があります。しかし、まちの人々は、自分自身の判断や決断を重ねて生きてきた人たちばかりです。まちの人とかかわることで、学生は自然と自分で判断し、実行する力を養っていくように思います。まちには先生がいっぱいいるのです。

まちの人の話を丁寧に聴き、理解し、話し合う中で、学生はまちや人とつながっていきます。まちづくりは、まず人つなぎ、人づくりである、と考えています。

良い“まちづくり”につなげるために

ある地域の計画策定にコーディネーターとして携わった際、参加した市民は自分たちの町が隣町と合併したことをお互いに快く思っておらず、行政やコーディネーターに対しても不信感を募らせていました。

私がコーディネーターとして意見を市民に求めても、不満や不信感しか表明されませんでした。しかし、「昔はこんなふうに良かったのに、今は。。。」と述べた箇所を地図にマークをしていたら、そのうち、「何をやっているの?」とみんなが私の地図に興味を持ち始め、そこから話し合いが進みだしたのです。
マーキングや色塗りした地図には、地域の人々が愛して止まない場所が浮かび上がっていました。そして、それらを眺めると、実は合併したことによって、まちが上流と下流と1つの川で結ばれ、川や自然の保全管理が以前よりもやりやすくなることがわかり、川づくりを通した地域づくり、仲間づくりがはじまったのです。

専門家として解決策を提示して快刀乱麻的にできることなど少ないのですが、当たり前だと思っていることに対して、よそ者の視点で新しい可能性を見出すことはできます。触媒として人と人とをつなげる中で、今までなかった動きが生まれ、動きと動きが連動し、それがよいまちづくりにつながっていく、と考えています。

対立軸の向こう側にあるものを見抜く力を養う

大学では、「ものを批判的に見る姿勢」が大切だと説かれます。私自身、学生時代は、まちのありように対して批判的に分析する重要性を、徹底して教わりました。

しかし、それだけでは「あらさがし」「ないものねだり」になってしまいます。批判的な視点とともに、「すでにある良いところを見つけ出す」という視点や姿勢が大事だと、私は思っています。生活している人々自身から「まちの悪いところ、駄目なところ」が指摘される場合も多々あります。その指摘の奥には、実は「まちを良くしたい」という気持ちがあるはずです。それを理解することが大切だと思います。

まちづくりを考えることを通して、学生たちには、対立軸の向こう側にあるものを見抜き、つながりを見出す力(感覚)を養ってほしいと思っています。それは、まちづくりに限らず、社会におけるさまざまな問題解決への突破口となるでしょう。

受験生へ一言!
四季折々の姿を見せてくれる京都、衣笠山のふもとが私たちのキャンパスです。心と頭と身体をフル回転させ、京都でしかできないこと、学生時代にしかできないことを思う存分展開してみませんか?
そんなみなさんを、さんしゃは、応援します。社会に出て、様々な問題を解決していくセンスと能力、胆力を共に養っていきましょう。

略歴永橋 爲介 准教授
京都大学大学院農学研究科環境デザイン学研究室博士課程修了、博士(農学)
四国学院大学、大阪大谷大学、石川県立大学、東京工業大学非常勤講師を経て現職。

研究概要 コミュニティ・デザイン論、環境デザイン論
著書 『こころのたねとして 記憶と社会とをつなぐアートプロジェクト』『環境と都市のデザイン(共著)』ほか。
担当科目 『環境形成論』『景観デザイン論』『社会調査士実習』ほか
参加プロジェクト 京都市右京区基本計画策定事業、豊中市アジェンダ21策定事業、京都市六原学区の魅力を伝えるマップづくり事業ほか
社会活動など 琵琶湖流域管理シナリオ研究会、宝塚市子ども審議会ほか

永橋爲介 准教授

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